mindformはこれまで、独自のインタビュー手法と認知科学、テクノロジーを横断的に組み合わせながら、個々の記憶や体験、潜在意識に潜む風景を丁寧に掬い取り、人の内面を作品として可視化するプロジェクトを進めてきた。アーティストと鑑賞者の関係性を再編成するこのプロセス自体が、アートの制作と鑑賞という行為そのものを更新する試みでもある。
AIの登場以降、私たちの社会は大きく変容しつつある。人間の思考、創造、判断の領域にまでAIが介入するいま、「自分とは何者か」という問いは、かつてないほど切実になるだろう。テクノロジーが自己の輪郭を曖昧にしていく時代に、私たちはあらためて自分自身の内側へと向かわざるを得ない。
紀元前、デルポイのアポロン神殿に刻まれた言葉がある。
γνῶθι σεαυτόν ——汝自身を知れ。
答えを求める前に、まず自分自身を問え、と。数千年を経てなお、この問いは色褪せない。AI技術の進化が加速する現代においてこそ、その問いは新たな切実さをもって私たちの前に立ちはだかる。
展示空間には、一枚の鏡が配されており、そこには鏡文字の言葉—— Who am I. Why am I. が並ぶ。その文字は、鏡の世界に映った自分が読める向きで書かれている。
問いを受け取るのは、こちら側の「私」ではない。鏡の向こうに存在する、もう一人の自分だ。鏡が捉えるのは光学的な像にすぎない。しかし、そこに「私」を見るのは、心(mind)である——。この非対称な認識の構造こそ、この作品が宿している核心だ。
鏡の向こうに広がるのは、あなた自身の記憶の空間である。これは、立体作品とAI生成表現を接続する、Mindformの新たな章である。そしてそれは同時に、数千年前にデルポイに刻まれた問いへの、現代における応答でもある。
まずは、今のあなたに浮かぶ一つの記憶や感情を言葉にしてください。